紀伊の蜜柑園に捨てられた刀

Original AI-generated book

紀伊の蜜柑園に捨てられた刀

About this book

明治四年秋、紀伊半島・有田川沿いの蜜柑園に、一人の男が流れ着く。元会津藩士・藤堂慎之介、三十二歳。戊辰戦争で主家を失い、刀を捨てて江戸を落ち、右膝は戦傷でわずかに曲がったまま。泥土に触れたことのない武家育ちの彼にとって、棘だらけの枝剪りも、重い籠運びも、耳に馴染まない紀州弁も、すべてが異国の儀式だった。周囲は彼を「北の落人」と呼び、距離を置く。園を仕切るのは、戦で夫と息子を失い、左手の指を二本欠きながら笑顔を絶やさない未亡人・お艶。彼女の下で蜜柑の甘い香りと潮風に身を委ねるうち、慎之介の眠りに忍び込むのは、慶応四年の記憶——銃声、燃え落ちる蔵、仲間の断末魔、そして自分だけが生き延びたという重すぎる事実だった。刀を埋めた場所と、蜜柑の種を蒔く手。二つの時間が静かに交差するとき、お艶の亡き息子の友人である少年が山の盗伐団に巻き込まれ、慎之介は再び刃物を握るのか、それとも別の手で守るのかを問われる。戦場の生々しい喪失と、合意の下で傷を重ね合う大人の親密さを率直に描きながら、異邦人が一歩ずつ土地に根を下ろしていく、回復と希望と平和の長編ヒーリング小説。

Book details

Genres:
Healing Fiction, Historical Fiction, Literary Fiction
Language:
ja
Published:
2026-07-24
Content rating:
R

Featured books

See all books in the bookstore